27:30:05

    雑記ブログ

    放置しており申し訳ございません

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    『 掌のノート/27:30:05 』

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    11月3日のヒーローインタビュー


     僕は真中満弦(まなかみつる)、みんな僕を真中クンと呼ぶ。
    「真中クーン。野球のこと、教えてくれへん?」
    「もう、栗山くん、いい加減にしてよ」
     栗山くんは冗談がすぎる。勉強にしろ野球にしろ、彼はできないことなんて何もないのに、こんな風に僕をからかう。でも、そういうオチャメな所が可愛くて、天使だなーと思ってしまう。
    「僕、タッチャンに呼ばれてんねん」
     栗山くんが言う。僕はタッチャンを頭に思い描いた。
     その人は野球部監督の伊東勤一(いとうきんいち)、双子のお兄さん。その弟の勤二(きんじ)も監督でカッチャンと呼ばれている。
     二人はもうおじいさんだが、若い頃は名投手だったらしい。タッチャンは、甲子園出場経験もある。カッチャンは惜しいところで行けなかった。聞くところによると、交通事故に遭って死にかけたらしい。
     なぜ二人がタッチャン、カッチャンと呼ばれているのか、僕は知らない。多分、ホルモンのテッチャンから来た愛称だと思う。
     僕らはタッチャンを探しに野球部専用グランドに向かった。
     案の定、タッチャンもカッチャンもそこにいた。
     タッチャンとカッチャンは昔、彼女を取り合ったらしく、異常なほど仲が悪い。なので、今日もベンチの端と端に座って、罵り合っている。
    「兄貴が、ワシの女を取ったんじゃ。最低の男じゃ!」
     カッチャンに言われて、兄のタッチャンも黙ってはいない。
    「うるせえ! その話はするんじゃねえ。イトウアサコの話なんぞ、もう聞きたくねえ!」
     天使な栗山くんは、その様子に困って苦笑していた。
     確かに、監督は2人もいらない。
     でも、どちらか一方を選ぶなんて、できないんだよね。




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    刑事事件専門弁護士・キツネ


     最近の犯罪の凶悪化には目を背けたくなる。
     先日、甲府地裁で結審した、カチカチ山事件も、その一つだ。陪審員は主にウサギに同情的だったが、かと言ってタヌキ(おばあさん殺害容疑。被疑者死亡のまま送検済)に劣らぬ残虐な犯行は、許されるべきではない。
     弁護人であるキツネは、ヘビ検察官の用意した証拠や目撃者の前で、勝ち目はないと判断した。情状酌量をカメ裁判官やカルガモ裁判員に訴える方向で進めたのだが、残念ながら判決は予想された通りだった。
     ほぼ求刑通りの懲役9年の判決が言い渡された後、被告のウサギはがっくりとうなだれた。裁判を見守っていたおじいさんも、おばあさんの遺影を抱えて涙を流していた。残りの寿命を考えると、ウサギの獄死は間違いない。
     キツネは当時ほかにも案件を抱えていた。現在もその裁判は終わっていない。
     それは、世間を震撼とさせた鬼ヶ島事件だ。
     突然思い立ち、なんの脈絡も無く鬼退治にでかけた桃太郎の、精神鑑定がキーとなった。わずかなきびだんごを得ることで犯行に加担した、犬・猿・雉も同様に鑑定を受けた。
     検察は、きびだんごに幻覚作用のある薬物が使用されていたのではないかとの見方を示している。きびだんごを作ったおばあさんも、既に共犯として逮捕されている。犯行の教唆、犯人隠避、及び麻薬取締法違反の容疑だった。
     起訴された彼らは、集団強盗殺害という極めて残忍な罪を犯したとして、検察側から懲役25年を求刑されている。
     彼らを救うことができるのか。地元住民の生活を守るために鬼を殺害したのだと釈明する彼らを、守る方法はあるのか。その正義の末の行動に、情状酌量は認められるのか。
    「もっと反省しろってか? ケッ、しらねーよ。こっから先はあんたの仕事だろーが」
     桃太郎の態度に、キツネは頭を抱えた。



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    11月1日のヒーローインタビュー



     僕は真中満弦(まなかみつる)、みんな僕を真中クンと呼ぶ。
     森繁(もりしげる)学園長と、和田豊高(わだゆたか)教頭は、大抵一緒にいる。和田教頭はまだ30代のイケメンで仕事熱心。みんなから慕われている先生だ。
     それにくらべ、森学園長ときたら、陶芸にしか興味がない。いつも美術室にある ” ろくろ ” の前に座っていることが多い。
    「学園長、栗山くんのことですが」
    「ん」
    「野球と陸上とサッカーと美術部のかけもちって、いくらスーパースターの彼でも無理があります」
     どうやら僕と栗山くんが美術室に入って来たことに、二人は気付いていないらしい。噂されている栗山くんは、困ったように僕の顔を見て笑っていた。
    「ん」
     学園長は筒状に成型された粘土を、そっと手で整えている。
    「実は彼のファンが他県からもやって来ているようで、トラブルが起こる前に観覧席を設けてほしい、栗山くんのスケジュールを教えてほしいと、学園に要望書が来てます。県知事から」
    「ん」
    「宿も取れない、交通機関も確保できないと、県議会も困惑しています」
    「ん」
     和田教頭は溜息をついていた。悩みが尽きないみたいだ。その心労はしっかりとヅラの下に隠されているけど、結局隠れていなかったりする。
    「せめて校内に侵入する人がいなくなるように、美術部だけでも退部……」
    「それだけはイカン!!!」
     森学園長は顔を真っ赤にして強い口調で言った後に、こう呟いた。
    「栗山くんにはこの粘土を……優しい感じで……触ってほしい……から……」
     和田教頭は、静かに学園長の顔を見つめていた。





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    過剰サービス



    「先週さ、高岡さんが湯沢さんの自宅へ行ったそうだよ」
    「本当ですか」
     タレント事務所に所属している高岡は、そんな同僚の囁き声に悩まされていた。
    「高岡くん、ちょっと来てくれるかな」
     ついに高岡は、部長に別室に呼び出された。
    「困るんだよ、許可無く勝手に行動されちゃ。ほかのタレントに迷惑がかかる」
    「申し訳ありません」
     高岡が謝っても、部長は苦い顔をしている。
    「……で、湯沢さんはどんな反応だったんだ」
    「はい。体をこっそり覗かれました」
    「だろう? 普通君みたいに可愛い子がやって来て家に居座ったら、そうなるに決まっているんだ」
    「本当に申し訳ありませんでした。以後気を付けます」
    「しょうがないな。それでなくても最近の顧客はあつかましいんだ。Aクラスの美人ばかりを希望してくる。しかもサプライズの演出まで要求する。たまったもんじゃないよ」
     高岡は自分の浅はかさを呪った。
    「……ちょっと道端で罠にかかってしまって……」
     部長は呆れたような顔でため息をついた。
    「ケガはしなかったのか? 羽を抜いた肌が赤くなってるぞ。予定外のサービスはしないように」
    「はい」
     高岡は頭を下げてから部屋を出た。
     そう言えば、雪女の川上さんも男性宅に行ったみたいだった。彼女は気が強いからいいけれど、私は反物まで渡してしまった。まだまだ三流タレントだわ。




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    10月30日のヒーローインタビュー


     僕は真中満弦(まなかみつる)、みんな僕を真中クンと呼ぶ。
     僕のクラス1年1組は、普通科でも本当に普通な生徒が集められている。でも別棟のA組は学園に寄付金を多く納めているお金持ちクラス。
     何もかも特別扱いのA組は、床は豪華な絨毯で、掃除は専門の業者が行う。昼食も弁当ではなく、レストランからシェフが来て特別コースを提供する。ほかにもまだまだ特別な部分があって、一つ一つ挙げていったらきりがない。
     そんなA組に、由乃ちゃんは在籍している。由乃ちゃんは、実はお金持ちのお嬢様なのだ。その気品ある佇まいを見ればすぐわかるけれど。
     A組には工藤公美(くどうきみ)という生徒もいる。この工藤さんは何故か由乃ちゃんをライバル視しているみたいだ。
     由乃ちゃんがブランドのサイフを持ってくれば、工藤さんはそのブランドより高価なブランドのサイフを持ってくる。由乃ちゃんが持ってきた翌日には必ず持ってくるとか。
     こんな調子で、鞄から消しゴムに至るまで必ず由乃ちゃんより良い物を持ってくる。
     これには由乃ちゃんも相当ムカついているらしく、教室の内外で静かな戦いが繰り広げられている。
    「真中、ミミズとカエルと毒のある毛虫を取って来い。先生に持ってこいと言われてる」
     由乃ちゃんはわざわざ1組に来て命令する。
     すると、由乃ちゃんがいなくなった後、工藤さんも1組に来て、
    「真中クン、悪いけど釣り具屋さんに行ってレッドワームを買って来てくださる? あと、ヒキガエルとチャドクガの幼虫も調達してきていただけないかしら。弟が欲しがってるの」
    と言って財布から1万円札を数枚出し、僕の目の前でピラピラとさせる。
     本当は何に使うのか、恐ろしくて訊けない。




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    タイムリミット



    「大きなつづらと、小さなつづら、どちらにしますか?」
     すずめのお宿を去る時に、私が舌をちょん切ったすずめが言う。
     旦那は小さいつづらを持って帰って来て、とんでもないお宝を手に入れた。だから私は、絶対大きなつづらを持って帰ってやる、そう思ってここに来た。
     でも、どうだろう。
     このすずめは、私が舌を切るというむごいことをしたのに、平然とした顔で私をもてなした。何を考えているか、大体想像がつく。
     きっと強欲な私が大きなつづらを持って帰るとふんで、その大きなつづらに魔物を閉じ込めているに違いない。
     その手にのるものか。
    「おばあさん。大きなつづらと小さなつづら、どちらにしますか?」
     旦那のこともあるし、小さいにつづらには確実にお宝が入っているのだ。これは間違いない。
     ここは小さいつづらをもらって確実にお宝を手に入れるのが賢明か。
     いや、待て。そんな簡単に決めていいのか。
     この小すずめは、私を憎んでいる。敢えて、小さいつづらに化け物を入れて騙そうとしているのではないか。
    「……おばあさん。どうしますか……?」
     私は迷いながらも大きなつづらに手を伸ばした。
     ちょっと待て。私が大きなつづらに手を伸ばした時、このすずめ、薄ら笑いを浮かべたぞ。やっぱりそうか。こっちに入れてるのか。
     いいや、違う。あの顔からすると、両方に入れている可能性だってある。
     でももしこっちの大きなつづらを貰って帰って鬼でも出てきたらどうする? 家ごと潰されるかもしれない。
     そうなると、たとえ瓦やせとかけが出て来たとしても小さいつづらの方が安心……
    「バアさん、サッサと選べよ!!」




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    10月28日のヒーローインタビュー


     僕は真中満弦(まなかみつる)、みんな僕を真中クンと呼ぶ。
     僕のクラスには、学園一怖いと評判の女子がいる。名前は中畑清良(なかはたせいら)。まだ入学して間もないのに、学園で彼女のことを知らない人はいない。可愛いとはちょっと違う、何か重い雰囲気の女子だ。
     清良さんは、いつも僕を睨みつけている。彼女と僕は教室の端と端に座っているのに、教室にいる間中ずっと怖い顔を僕に向けている。僕は彼女に何か酷い事をしたんだろうか。
     彼女は気に入らない人間は誰かれ構わず襟首を持って締め上げている。男子が彼女に泣かされているのをよく見かける。
     とにかく清良さんはスゴイ人だ。相撲部の部員も縮み上がるくらい太い腕が半袖シャツから覗く。男子を殴り飛ばす時はそ二の腕がぶるると揺れる。
     きっと僕も、いつか仔猫のようにシャツを掴んで放り投げられるんだろうな。今から受け身の練習をしとこうかな。
     そんなことを思いながら帰る用意をしていると、ついに清良さんがゴンゴンと床を踏みしめながら、僕に近づいて来た。その時が来たんだな、と僕は思った。
    「ちょっと顔をかせ」
     清良さんに低い声で言われ、ついていく。
     誰もいない、体育館裏で彼女がものすごい顔で睨んだかと思うと、不敵な笑みを浮かべた。
    「真中クン。私は中畑清良と言う。知っているか」
    「うん、うん。勿論だよ。ゴメンね。ゴメンね。ゴメンね」
    「おまえが好きだ」
    「え?」
    「おまえがものすごく好きだ」
    「あ……はい」
     僕は、足元のたんぽぽを見ていた。




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