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    雑記ブログ

    Category: ●Noise or Melody<PG12>

    Noise or Melody 第1部:過去 / 第1話

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    第1話 con melancolia <憂鬱に> 記憶というものは、時が経つにつれて大きく深く歪んで変化する。 印象的な事実だけを残してその周辺の出来事はあやふやになり、消えてしまっている事さえある。 そんなことくらい、奏輔だって十分過ぎるほどわかっていた。 それでも、残った記憶が大きすぎると、支配されてしまう。それが全てだったかのように囚われたまま日々を過ごす。 あの頃、必死に奏でた音色が雑音に埋もれてゆく。...

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    Noise or Melody 第1部:過去 / 第2話

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    第2話 bizzarro <異様な> (暴力描写があります) その日は月末が近くて、仕事が捌(さば)き切れず、残業していた。「志葉、まだ残業してるのか?」 上司が営業部のフロアに戻ってきて、彼のデスクの近くにやってきた。 背後からやってくる上司の太い声は、低く響いて苦手な声だ。「そういえば、もう8時ですね……」 奏輔が振り向くと、上司は持っていた雑誌でポンと奏輔の頭を叩いた。「おまえは昼間サボり過ぎなんだよ...

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    Noise or Melody 第1部:過去 / 第3話

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    第3話 retenant <ためらって> 中学時代、教師を殴って出席停止を食らった志葉奏輔は、生徒たちに特別な目で見られるようになった。それでもその時点では奏輔に同情する生徒もいた。殴られた教師というのは、生徒をいたぶるのが好きな、陰険な男だったからだ。 ただ、その後の奏輔の素行が悪すぎた。 出席停止になった奏輔に対して、友人は無視し、裏切るような態度を見せた。察するところ、親に関わるなとでも言われたのだ...

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    Noise or Melody 第1部:過去 / 第4話

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    第4話 tempestoso <嵐のように>「手、離せ」 奏輔は出来る限り気持ちを抑えて低い声を出した。 七葉は言う通りに手を離した。奏輔は前を向き彼女から遠ざかろうとした。しかし、七葉は彼の背後から言い放った。「さっきの男子に、付き合ってくれって言われた!」 その口調は明らかに怒っている。訳の分からない怒りを受けて、奏輔は立ち止まり振り返った。呑み込めない異物が、クッと喉に閊(つか)えるような苦しみを感じ...

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    Noise or Melody 第2部:始まり / 第5話

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    第5話 instante <駆りたてるような> 奏輔が呆然として、一点を見つめたまま微動だにしない様子を見た青年は、戸惑っていた。「すみません……何か……失礼なこと言いましたか」 ふと我に返った奏輔は「あ、いや……」と首を横に振った。 そして、相手の不思議そうな表情を受けた奏輔は、そのまま食い入るように彼を見て訊いた。「おまえ七葉と知り合いなんだな」「はい」 当たり前のように彼は頷いた。「七葉さんは、僕の姉さん...

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    Noise or Melody 第2部:始まり / 第6話

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    第6話 con affetto <心を動かして> 千歌から奏輔に連絡があったのは、午後6時前だった。奏輔の右耳に聴こえる彼女は声は、まるで小鳥が歌っているかのように小さく、そして澄んでいた。 千歌に指定された場所は、昨日会ったコーヒーショップだった。 急いで仕事を終わらせて店に飛んでいったが、もう既に千歌は席に座って温かいコーヒーを飲んでいた。「遅くなって、すみません」 奏輔が謝ると、千歌はおっとりとした表...

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    Noise or Melody 第2部:始まり / 第7話

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    第7話 timido <おずおずと> まさか、こんなことになるとは。 よく知った人間、たとえば仲の良いハルミくらいでないと、部屋に泊めたことはない。ましてや一緒に住むなんて、考えられない。たった3週間ほど前に初めてあったばかりの人間と。 あれから、引っ越し業者を手配して、相見積を取って一番安い業者で、やっと引っ越しを予約した。そんなことを、全部奏輔が2人の代わりにパパッと決めてしまった。 もう日付は10月...

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    Noise or Melody 第2部:始まり / 第8話

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    第8話 variato <変奏> 千歌の持っている七葉の情報を知りたい、と切り出せないまま、さらに2週間が過ぎた。もう10月も終わる。 姉弟がここに引っ越して来てから、時折千歌が奏輔の顔を見ている。もしかすると、七葉のことを訊かなくていいの? と思っているのかもしれない。ただ千歌の性格上、自分から言い出そうとはしないだろう。 奏輔の立場ならもっと遠慮せずに千歌に訊いていいはずだった。訊きたいがために部屋ま...

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