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    雑記ブログ

    Category: ●きっと明日も手をつなごう

    【きっと明日も手をつなごう】1章 父のこと<1話:父を知らぬ息子>

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    愛しい魂へ想いを込めて。【1章 / 父のこと】 1話 父を知らぬ息子 小さな満月が青白い光を放っていた。 栖河悠(スガワ・ユウ)は車のフロントガラス越しに空を見上げていた。月はまるで暗いトンネルの向こうにある出口のようだ。 それともそこは入口なんだろうか。真っ暗な背景に浮かぶ月は、空の一部分だけ丸く切り取っているようにも見える。もし入口だとすれば、どんな世界に続く入口なんだろう。 悠はそんなことを...

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    【きっと明日も手をつなごう】 1章 父のこと<2話:医者と患者>

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    【1章 / 父のこと】 2話 医者と患者 祖母の葬儀から数日経った日の夜のことだった。栖河悠は勤務先の病院から自分の部屋へ帰ろうと駐車場へ向かっていた。 戻ろうとする部屋は、とてもじゃないが医者が住んでいるとは思えない安っぽいマンションだった。きっと世間の人々には想像がつかないだろうが、病院の経営状態によっては、30手前の勤務医なんてその程度の給料だ。どれだけ患者を診ようが関係ない。勤務時間くらいし...

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    【きっと明日も手をつなごう】2章僕のこと<3話:変わってゆく世界>

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    【2章 / 僕のこと】 3話 変わってゆく世界 生島亜実の息子は涼太といった。 翌日の夜、奇跡的に9時頃に帰ることができた悠が様子を見に来ると、涼太は元気に部屋を走り回っていた。 悠は病院に勤めているのだから当たり前と言えば当たり前だが、元気のない子どもに接する機会が多い。なので、この涼太を見て幼児の持つ回復力に圧倒された。 小児科や産科*1を選んで医師になろうとした友人たちは、どの科よりも過酷な...

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    【きっと明日も手をつなごう】 2章 僕のこと <4話:その兆候>

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    【2章 / 僕のこと】 4話 その兆候 亜実は病院で悠と別れ、涼太と二人で帰路に就いた。 途中、涼太にせがまれて、ショッピングセンターの中の子どもの遊び場に寄った。コインで動く乗り物に喜ぶ涼太を見ながら、ふとその遊び場の向こうに占いの館があるのを見つけた。 昔から占いが大好きで、占い師を見つけるたび将来や恋愛運をみてもらっていた亜実は、当然のように涼太を連れてその館に入っていった。その行動に特に意...

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    【きっと明日も手をつなごう】2章 僕のこと <5話:出逢った意味>

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    【2章 / 僕のこと】 5話 出逢った意味 基本給二十八万円、時間外・当直手当含めて三十六万円。手取りは……。「いいよ、もう……」 亜実は神妙な顔をして沈んだ声を出した。「やっぱり足りない?」 そんな彼女を見て、悠も表情を暗くする。二人は対面に座って、お互いの顔を見つめている。「悠くん、おかしいよ」 亜実はため息をついて俯き、目だけで悠を見上げていた。「仕事が忙しいのは仕方ないけど、給料を上げるために...

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    【きっと明日も手をつなごう】 2章 僕のこと <6話:連鎖>

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    【2章 / 僕のこと】 6話 連鎖「今日、籍を入れたい」 墓参りに行くつもりだった日曜の朝、悠が言った。 驚いて「でも」と言いかける亜実に、彼は反論は許さないとばかりに目を閉じて大きく頭(かぶり)を振った。涼太がごくごくと牛乳を飲んでいる姿が、亜実の目の端に映る。「おかあさん、悠くんにおこられてるの?」 口の周りを白くさせて涼太が尋ねる。その涼太の可愛らしい姿にも、今朝の悠は反応しなかった。テーブ...

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    【きっと明日も手をつなごう】 3章 母のこと <7話:物語>

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    【3章 / 母のこと】 7話 物語 母は独りになると、墓の前で俯き肩を落とした。「尚さん……」 あまりにもひどいわ、と母は思った。「そっちはどんな世界なの?」 蝉の声が彼女の言葉を遮る。 白く輝く太陽が、青空を切り取りそこから光を溢れさせているように思えた。それは出口のようであり、入口のようでもある。もしそうだとしたら、その出入り口を通ってそっちの世界へ行けるのだろうか。「それなら、私を連れて行って...

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    【きっと明日も手をつなごう】3章 母のこと <8話:そこにある命>

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    【3章 / 母のこと】 8話 そこにある命「そんなのさ、たまたまだよ。考えすぎだと思う。カオルおじいちゃんの名前が男の子にも女の子にも使える名前だとしても、そういう……死ぬ前に……とか……想像でしかないんでしょう? あくまで可能性の問題でしょ?」 墓参りから帰宅した亜実は、悠に向かって言った。だいたいそんなこと非科学的だし、職業とか名前とかで死ぬなんて意味がわからない、とまくしたてた。機嫌の悪い彼女を見...

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