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    雑記ブログ

    Category: ●さくら降ります

    第1話① 『さくら降ります』

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     彼は満開の桜の木の下で無邪気な笑顔を見せた。 彼女は応えようと遠くから微笑む。 彼女は満開の桜の木の下で無邪気に笑いかける。 彼はそれに応えようと近づいていく。◇   ◇   ◇第1話 桜の中の人 (1) 開発企画部の新商品情報を聴いていたはずが、一瞬体の力が抜けてビクッと目を覚ました。 見渡せば皆、ノートPCを見ることに集中している。パワーポイントによるアニメーション画像が商品の特性をわかりやすく...

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    第1話② 『さくら降ります』

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    第1話 桜の中の人 (2) 智哉が社内報を手にしながら席に着いた時、 慶佑* もちょうど、眠そうな顔で出社してきたところだった。彼はデスクの前に立つと、冊子を持ち上げた。「これ、なんで12月なのに桜なんですかねぇ?」 不思議そうに慶佑が尋ねると、先輩社員の一人がのんびりと言った。「あー、その今月号の表紙、三谷さんが描いたんだよ」「ミタニサンて、あの、三谷さんですか?!」 慶佑が驚いた顔で問い返す。 二...

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    第2話① 『さくら降ります』

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    第2話 スケッチの中の人 (1)「飲みに行きましょうよ」 すぐ酔っぱらって赤くなる割りに酒が好きで、それ以上に飲みの席が大好きな慶佑が、甘えるように智哉を誘う。 デスクの上のデジタル時計に目をやった。18時15分。 今週末にクリスマスを控えた月曜日。この時期に、しかも週の頭から飲むのか。 そう思った智哉に、慶佑がすかさず言う。「フツーに居酒屋で飲みたいんです。チキンもローストビーフもいらないから。僕は...

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    第2話② 『さくら降ります』

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    第2話 スケッチの中の人 (2) 陽の姿が見えなくなると、今井が目を細めて智哉を見た。そこには少しの猜疑心が滲んでいる。「三谷への質問て何だったんですか……。あいつの気を引くほどの質問なんだから、やっぱり……超、個人的な??」 今井の表情が、何か期待するようなものに変わってゆく。「いや、ただ……社内報の桜の絵が気になって……」 智哉が戸惑いながら答えると、相手は軽い調子で「ああ、なんだ、アレですかー」と笑...

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    第2話③ 『さくら降ります』

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    第2話 スケッチブックの中の人 (3) しばらく絵を見つめていて気が付いた。視線を上げなくてもわかる。三谷陽の影が、ずっと智哉の横顔に被さっている。 成り行きで、昔からの友人であるかのように一冊のスケッチブックを見下ろし、二人は顔を寄せている。彼女の細い腕と智哉の腕がぴたりと密着しているが、陽はどう思っているんだろう。寒い季節だから、何とも思っていないのだろうか。 俯いたまま、あのさ、と声を漏らし...

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