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    雑記ブログ

    Category: ●相似<PG12>

    『相似』 #1

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    #1 2016年11月30日水曜日 灰皿の上で炎が上がる。 背中を丸め、テーブルの上のものをじっと見つめる寿友(じゅう)の頬に、ゆらゆらと赤い影が泳ぐ。 彼の歪んだ笑みが消える前に、玄関のドアを開く音がした。「ただいまー」 張りのある、よく通る声が家の中に響く。 寿友はその声を聞くと、スッと立ちあがり、灰皿の火を消すことも無く自分の部屋に入った。 学校から帰って来たばかりの早采(さとる)は、静かな家の中で...

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    『相似』 #2

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    #2 2016年12月1日木曜日 校舎の裏手にあるゴミ焼却炉の前で、数人の男子生徒が集まっていた。「実テ、サトルがまたトップ取ったな」「順当でしょ」 白い空からチラチラと降ってきた雪に、皆は顔を見合わせた。ゴミ箱一つ抱えて外に逃げて来たものの、そろそろ教室に戻らねばならない。午後の授業の後の掃除時間も終わり、ホームルームが待っている。 俺の席、ジュウと近いんだよ。教室に帰りたくない。 わかる。暗いし、頭...

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    『相似』 #3

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    #3 2016年12月16日金曜日 初田暎(はつた・あき)はバスから降りると、赤撞早采と待ち合わせている店へと急いだ。普段、学生服とリュック姿でその店に入ると何かと嫌な顔をされるのだが、早采が先に待っていれば大丈夫だ。 その小さなジュエリーショップは昔からこの土地で営業している老舗で、高級品を多く扱う。そもそもジュエリーショップと呼ばれているのは最近改装したせいであり、今現在も看板はA貴金属店である。 な...

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    『相似』 #4

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    #4 2016年12月16日金曜日 寿友は夕方五時過ぎ、立派な一戸建てである赤撞の家に着いた。いつものことだが、家族の中では誰よりも早い帰宅だった。 彼の義父が帰るのは、たいてい深夜になる。母は主婦だが、料理や、何々アレンジメントの類の教室に毎日通っていて夕方は不在。ただ、彼女は新しい息子の早采に気を遣い、彼が部活から帰ってくる六時過ぎには、できるだけ家に居るように努力しているようだった。 家に誰もいない...

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