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    雑記ブログ

    Category: ●帰る虹

    【帰る虹】第1話/ 高3の夏、高2の夏。

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     まるで生きているかのような入道雲が、青い空を侵食している。 夏なんて嫌いだ。 もう二度と夏なんて来なくてよかったのに、時間というのは残酷に過ぎて、また季節を繰り返す。 誰もいない教室でぼんやり空を眺めていた僕は、廊下から聞こえてくる足音に人の気配を感じた。「友永~」 元気に僕を呼んだ声の主は、向居。活発で明るい女子。こいつがいると少しだけ救われる。「夏休みにごめんねー」「いーよ」 彼女は僕が座っ...

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    【帰る虹】第2話/ 吐き出した想い。

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     僕は向居に大したアドバイスもできないまま、教室から出た。 雨は嘘のようにあがり、夕日が強い光を放っていた。昼に教室を出ていたら、虹が見れたかもしれない。 足元の水たまりを見つめた。 空は青く映っているのに、自分の顔や体は黒っぽく、色が無い。影になっているせいだが、自分の心の中が表れているようで気が滅入った。 三度目の最後の委員会で、僕は彼女に気持ちを伝えようと思っていた。伝えた結果がどうであって...

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    【帰る虹】第3話/ 戻ってきた幼馴染。

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     しばらくして僕はゆっくりと顔を上げた。 もう、みくりの声は聞こえず、風の音だけになったからだ。 涙を流して、大声で叫んで、僕は少しだけ荷物を下ろすことができた。彼女はもういないんだという事実が、ようやく理解できたみたいだ。 僕はぼんやりして目の前の低い空を見ていた。涙で汚れた顔をタオルで拭いたが、全身の脱力感でまだ歩き出せそうになかった。 すると、座っている僕の前に回り込む人影があった。 うちの...

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    【帰る虹】第4話/ 君の願いと僕の願い。

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     僕たちが小さい頃家族と初詣に来ていた、近所の氏神様が目の前にあった。「うわ、久しぶりに来た」 僕が言うと、隣にいたみくりは小首をかしげて微笑んだ。「毎年、初詣に来てないの?」「めんどくさくて、中学でやめた。神様とかいないし」「そっかー。誘っても来なかったもんね」 いつも見ていたみくりのままだった。まるで昨日まで一緒にいたような気さえする。「でも、なんでここに用事があるの?」 僕が訊くと、みくりは...

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    【帰る虹】第5話/ 少年の告白。

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    「えっとね、キジネコ。オスで、青いリボンがついてるんだけど」 2人の少年は顔を見合わせていた。「見かけないよな」「うん。キジはいっぱいいるけど……リボンとれたのかも」 僕は2人の足元に置かれた煮干しのようなものやミルクを見ながら言った。「君たち、優しいね。そうやって毎日エサをあげてるの?」「怒られるから、毎日は来れない」「そうか」 僕は頷いた。「僕の友達もね、猫が好きで。こっそり高校の近くのビルの陰...

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    【帰る虹】第6話/ 戻っていった彼女。

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     僕は少年たちのいた場所を後にし、みくりが待っているベンチへと戻った。 彼女は本当にうれしそうに僕を迎えてくれた。「バッチリだよ、捷! さすが小学校の時から主役張ってただけあるよね。この、演技派俳優!」 僕はみくりに褒められて、照れながら笑っていた。 そうだな、僕はいつだってみくりに褒められていた。どんなことでも「すごいね」って、彼女だけが僕を見て拍手してくれていた。 僕は彼女に何かしてあげられた...

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    【帰る虹】第7話(最終話)/ 雨と虹と君と。

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    「あ、はい。よく覚えてらっしゃいますね」 僕が言うと、神主は微笑んでいた。「確か、あの時は同じくらいの年の女性と一緒でしたねえ」 そう言われて僕はハッとした。去年、僕がここに参拝に来たということは、あれは夢ではなかったのか。しかもみくりの姿をこの人は見ている。彼女は霊なんだと信じていたけど、僕以外の人にも彼女の姿は見えるんだろうか。いやいや、あれは霊でなければ、僕の妄想か夢のはず。「彼女は亡くなり...

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