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    雑記ブログ

    Category: ●瑠璃の未来へ

    【瑠璃の未来へ】第1話/ 自転車に乗って

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     地元を走る電車が傍を通る。 少し強くなった日差しを感じながら、槻島笑璃(ツキシマ・エリ)は自転車で走っていた。 この広い道路は車も走れば人も歩く。ラインが引かれているわけではないので、周囲に気を付けて走る。 道の先は電車の線路に沿ってカーブになっているので速度を落とす。 そうすれば聞こえてくる。「えーマジでかあ」「何言ってんだよ、バッカだわー」「いや、マジだって、ほんと、マジマジ」 笑璃のマンシ...

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    【瑠璃の未来へ】第2話/ 君は通り過ぎてく

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     耀は犬と電車沿いの道を歩いていた。この道をゆけば高校の前を通って土手に出る。電車の走行音がうるさいこの場所を、急いで通り過ぎよう。 そこは車道も歩道も分けられていない。車も通れば人も通る。ただ学生が多い道路なので、車は普段から徐行してくれる。油断していたわけではなかったが、ある程度この道を走る車の良識を信じていた。 それなのに、耀が確認のために後ろを見た途端、大きな車が迫って来ていた。 猛スピー...

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    【瑠璃の未来へ】第3話/ 空を見ない放ち鳥

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     太刀花例司(タチバナ・レイジ)は、笑璃の頭を撫でながら、愛おしそうに彼女を抱きしめた。「おまえはいつも人に迷惑かけるから、オレが助けてやんなきゃどうしようもないからな。そういうとこが可愛いんだ。わかるだろ?」 笑璃はぎこちなく頷いた。「おまえのバカはさ、親がバカだから、しょうがねえんだよ。だから今更心療内科なんて通っても、意味ねえよ。支払いがムダだ」 例司は笑璃から手を離して、彼女の部屋のソファ...

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    【瑠璃の未来へ】第4話/ 君の近くへ行きたい

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     耀はハンバーガーショップでドリンクを頼んでいた。 席で待っている南穂の前に座り、彼女に紅茶を差し出した。「多分、それってさDVとかじゃない?」 南穂は言った。「顔とか体にアザはなかった?」 耀は思い出していたが、「いや、なかったと思う」と答えた。 南穂は中学から一緒で、耀とは気が合い、話しやすい女子だった。「そっかあ。でも車から突き落とすなんて、まともじゃないよねえ。ケンカしてたとしても、男がそ...

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    【瑠璃の未来へ】第5話/ 届くと信じてる

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     6月になってからというもの、ほぼ日差しは夏だ。 木崎耀の学校では半袖シャツにズボンかスカートという格好で通うことになっている。ネクタイ、リボンも夏は免除だった。そうなるとまるで特徴が無い。中学生と間違えられる恐れすらある。 下校する時、耀を囲んだ4人が不思議そうに彼を見つめた。「どうしたんだよ、ヒカリ」 一人が心配そうに耀の顔を覗き込んだ。 耀は4人の顔をも見渡して言った。「ごめん、ちょっと腹の...

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    【瑠璃の未来へ】第6話/ 何かを伝えたいだけ

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     笑璃は5時前、夕方の買い物にでかけようと自転車に乗った。 彼女は近くの文化会館で9時から3時まで料理講習会の講師をしていて、夜は6時から10時まで知り合いのレストランで洋食を作っている。 近くのスーパーに買い物に行ったら、すぐに帰ってレストランに行く準備をしなければ。 そう思いながら15分ほどの距離のスーパーへと自転車を走らせた。 行く道の途中であの高校があるけれど、今日はもう会える時間じゃない。 ...

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    【瑠璃の未来へ】第7話/ それは、大切な名前

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     耀は彼女が自転車を停めて、自分を向き直ってくれた様子を見て、パッと明るい顔になった。 駆けよったけれど、笑璃からは1メートルほどの距離を取った。「あの、なんて呼んだらいいですか?」「あ、私? 槻島です」「槻島さん。あ、オレはヒカリでいいんで」「ヒカリくん……?」「いや、呼び捨てでいいです。クンとかつけられると気持ち悪いし」 耀が笑うと、笑璃も笑った。 初めて見た笑璃の笑顔に、耀は感動していた。 こ...

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    【瑠璃の未来へ】第8話/ どうして

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     もしかして、私、励まされてるの? 笑璃は無言のまま、また自転車を押し始めた。 私が例司さんに突き飛ばされたのを耀は見ていたんだ。そりゃそうだよね。倒れてすぐ助けてくれたんだから。 やっぱりバカだな、私は。彼は気遣ってこうして様子を見て励ましてくれてるだけだって、どうして気付かなかったの? いい気になって、仲良くなれそうな気がして喜んでた。 彼はただの通りすがりの人間に手を差し伸べただけだったのに...

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