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    雑記ブログ

    Archive: 2016年07月

    【つながる】 第3話

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     26, 2016

     光に溶けそうな彼女は「ずっと一緒にいられると思っていたのに」と言った。「いつかきっと二人で幸せになれると信じてたのに……もう、逢えないなんて……嫌よ」 オレは首を横に振る。彼女の手を握ったまま、一緒にいたい、オレの傍にいてと請うた。 そのとき、「どうするんだ」という老人の声がした。それは、亡くなった祖父の声だ。 彼女はその声に悲しそうに目を閉じた。思わず、オレは手に力を込めた。「行くなよ」と叫んでい...

    【つながる】 第2話

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     26, 2016

     数日後、大学から帰る途中で高校の後輩の女子に声をかけられた。「小野さん、最近彼女と一緒じゃないんですね」「彼女?」 その子はオレの問いかけに不思議そうな顔をした。「彼女でしょう? いつもずっと一緒にいたし。ベリーショートのきれいな人……」 オレはその子から一歩、後退った。 ベリーショートのきれいな人って。どう考えたって、幸のことしか浮かばない。 いつも一緒にいた? いや、オレは家の外ではあいつには...

    【つながる】 第1話

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     26, 2016

     コマチなんて呼ばれている美貌の持ち主であるオレは、名を小野貴之という。 近所に住んでいる高瀬幸は、オレの3歳年上のいとこで、実質姉のような存在。ウザいのなんのって、週末になるとDVDを持参してオレの家で鑑賞して帰る。 たぁちゃん、こうちゃんなんて呼び合っていた子どもの頃ならいざ知らず、オレが大学生になった今でも、こんなに姉貴ぶりたいのか。というか、いい加減うちに来て映画を観て、勝手に泣いてティッシ...

    Noise or Melody 第3部:目途 / 第12話(最終話)

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     26, 2016

    第12話 tutti <総奏>「手をつないで歩く? バカ、そんなことできるかよ」 奏輔は絡みつく七葉を振り払った。照れくさくて恥ずかしいだけでなく、肌に触れてしまったら、それ以上を求めてしまいそうで自制していた。 目の前を、仲良さそうにじゃれ合う男女が通り過ぎても、奏輔は知らん顔をしていた。 そうすることが、愛情表現だと思っていたから。 七葉を大切にしたかったから。 でも七葉は、そうは受け取っていなかっ...

    Noise or Melody 第3部:目途 / 第11話

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     26, 2016

    第11話 fiacco <疲れ果てて> リビングに冷たい空気が漂う。 上着も脱がないままソファに座り込む奏輔の前には、千歌が立っていた。「座れ」 奏輔は千歌の顔を見ることができなかった。長いソファの前にはローテーブルがあるだけで、彼女が座るとすれば奏輔の隣の空間しかない。それでも、面と向かって話すよりマシだった。 千歌は戸惑いながらソファの隅に腰を下ろした。 音の無い時間が過ぎる。ほんの数秒のはずなのに、...

    Noise or Melody 第3部:目途 / 第10話

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     26, 2016

    第10話 sensibile <敏感に> 千歌は口を半分開いたまま、ゆっくりと瞬きした。 奏輔は、また無愛想に呟いた。「そういうことだから、もう、ビビんなくて済むだろ」 奏輔と千歌は、暗いままの部屋で向かい合って立っていた。廊下の照明の光が、開け放たれたドアから部屋に入って来ていた。 奏輔は、千歌の物言いたげな視線を避けて、ベッドに座った。「向こうのテーブルの上に紙袋があっただろ。千歌に買ってきた服だ。着て...

    Noise or Melody 第3部:目途 / 第9話

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     26, 2016

    第9話 aperto <明確な> そんなことがあってから1週間が経った、土曜の朝のことだった。「姉さん今日も仕事?」「うん、でもいつもどおり、夕方には帰って来るけど。どうしたの?」「今日は夕飯いらないよ」 桜佳と千歌はテーブルで話していた。 奏輔はトーストを食べながらコーヒーを沸かしていた。テーブルの近くにいたので、桜佳の声は十分聞こえていた。「昼から出かける。それで友達んちに泊まりに行くから」 そうい...

    Noise or Melody 第2部:始まり / 第8話

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     26, 2016

    第8話 variato <変奏> 千歌の持っている七葉の情報を知りたい、と切り出せないまま、さらに2週間が過ぎた。もう10月も終わる。 姉弟がここに引っ越して来てから、時折千歌が奏輔の顔を見ている。もしかすると、七葉のことを訊かなくていいの? と思っているのかもしれない。ただ千歌の性格上、自分から言い出そうとはしないだろう。 奏輔の立場ならもっと遠慮せずに千歌に訊いていいはずだった。訊きたいがために部屋ま...