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    雑記ブログ

    Archive: 2016年11月

    第2話① 『さくら降ります』

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     18, 2016

    第2話 スケッチの中の人 (1)「飲みに行きましょうよ」 すぐ酔っぱらって赤くなる割りに酒が好きで、それ以上に飲みの席が大好きな慶佑が、甘えるように智哉を誘う。 デスクの上のデジタル時計に目をやった。18時15分。 今週末にクリスマスを控えた月曜日。この時期に、しかも週の頭から飲むのか。 そう思った智哉に、慶佑がすかさず言う。「フツーに居酒屋で飲みたいんです。チキンもローストビーフもいらないから。僕は...

    第1話② 『さくら降ります』

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     18, 2016

    第1話 桜の中の人 (2) 智哉が社内報を手にしながら席に着いた時、 慶佑* もちょうど、眠そうな顔で出社してきたところだった。彼はデスクの前に立つと、冊子を持ち上げた。「これ、なんで12月なのに桜なんですかねぇ?」 不思議そうに慶佑が尋ねると、先輩社員の一人がのんびりと言った。「あー、その今月号の表紙、三谷さんが描いたんだよ」「ミタニサンて、あの、三谷さんですか?!」 慶佑が驚いた顔で問い返す。 二...

    第1話① 『さくら降ります』

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     18, 2016

     彼は満開の桜の木の下で無邪気な笑顔を見せた。 彼女は応えようと遠くから微笑む。 彼女は満開の桜の木の下で無邪気に笑いかける。 彼はそれに応えようと近づいていく。◇   ◇   ◇第1話 桜の中の人 (1) 開発企画部の新商品情報を聴いていたはずが、一瞬体の力が抜けてビクッと目を覚ました。 見渡せば皆、ノートPCを見ることに集中している。パワーポイントによるアニメーション画像が商品の特性をわかりやすく...

    『相似』 #3

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     16, 2016

    #3 2016年12月16日金曜日 初田暎(はつた・あき)はバスから降りると、赤撞早采と待ち合わせている店へと急いだ。普段、学生服とリュック姿でその店に入ると何かと嫌な顔をされるのだが、早采が先に待っていれば大丈夫だ。 その小さなジュエリーショップは昔からこの土地で営業している老舗で、高級品を多く扱う。そもそもジュエリーショップと呼ばれているのは最近改装したせいであり、今現在も看板はA貴金属店である。 な...

    『相似』 #2

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     16, 2016

    #2 2016年12月1日木曜日 校舎の裏手にあるゴミ焼却炉の前で、数人の男子生徒が集まっていた。「実テ、サトルがまたトップ取ったな」「順当でしょ」 白い空からチラチラと降ってきた雪に、皆は顔を見合わせた。ゴミ箱一つ抱えて外に逃げて来たものの、そろそろ教室に戻らねばならない。午後の授業の後の掃除時間も終わり、ホームルームが待っている。 俺の席、ジュウと近いんだよ。教室に帰りたくない。 わかる。暗いし、頭...

    『相似』 #1

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     16, 2016

    #1 2016年11月30日水曜日 灰皿の上で炎が上がる。 背中を丸め、テーブルの上のものをじっと見つめる寿友(じゅう)の頬に、ゆらゆらと赤い影が泳ぐ。 彼の歪んだ笑みが消える前に、玄関のドアを開く音がした。「ただいまー」 張りのある、よく通る声が家の中に響く。 寿友はその声を聞くと、スッと立ちあがり、灰皿の火を消すことも無く自分の部屋に入った。 学校から帰って来たばかりの早采(さとる)は、静かな家の中で...

    自殺行為① 【 M of L 】

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     15, 2016

    1-5-1  自殺行為 < 1 / 2 > その後の土日、つまり昨日、一昨日に、夏から何度かメールが来ていた。ただ、俺が返信しないのはいつものことだ。 メールの内容からすると別れたくないようだが、寝てしまったのは夏の方なので、あまり強い態度に出られないらしい。絵文字も控えめでどことなく遠慮気味だった。 夏の場合、返事がなくても不安にならないように鍛えておいただけあって、むやみに電話してくることはない。あんな...

    彼女の妄想② 【 M of L 】

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     15, 2016

    1-4-2  彼女の妄想 < 2 / 2 > 冷たい手で引っ張り起こされた。 やっぱりこのまま寝させてくれというのは無理らしい。適当に理由をつけて帰ってしまおうと思った。 もう言うべきことは言ってしまったし、それ以上の補足説明はできない。 それなのに、夏が泣く。めんどくさい……。なんで泣く? そこまでして俺に執着する意味が分からない。 でも、それを言うなら、俺も意味の分からないことをしている。 俺は夏に執着は...